こんにちは。
馬谷です。
皆さんの会社では、定年退職し、再雇用された社員の人から「定年後は、フルタイムで働きたいが、年金が減らされるから、短時間で勤務することにした」と聞いたことはありませんか?
それは公的年金に「在職老齢年金」という仕組みがあるからです。
この在職老齢年金は、収入に応じて年金を減額して支給するので、シニア層の働く意欲をそぐという批判もあり、政府は見直しに向けて議論を始めています。
今回はこの制度の現状と、もしもこの制度が廃止された場合に、家計にどのような影響があるのかをみていきたいと思います。
在職老齢年金を理解する
在職老齢年金とは
在職老齢年金は、会社で厚生年金保険に加入し保険料を納めてる人が対象になります。
逆に言えば、厚生年金保険に加入せず、保険料を納めていない人は、年金が減額されることはありません。
しかし従業員が501人以上の会社では、週の労働時間が20時間以上等の場合は、強制加入となるなど、条件が緩和されているのでシニア層が厚生年金に加入する機会が増えています。
年金が支給停止となる基準
年金月額と月収(給与・賞与合計の月額換算)に応じて年金額は減額して支給され、場合によっては全額支給停止になります。
60歳台前半と、65歳以降とでは計算の仕組みが異なります。
年金月額と月収(給与・賞与合計の月額換算)を合計した金額が、60歳台前半は28万円、65歳以降は46万円を上回ると、一定の算式によって年金が減額されます。
この減額分は、 会社を退職した後に、遡って支給されると思っている人もいますが、戻っては来ませんので注意が必要です。
また、減額されるのはあくまで厚生年金であって基礎年金(国民年金)は関係ありません。
以下の 早見表は「減額後の受取額」を記載しています。

誕生日が、
【男性】昭和36年4月2日以降
【女性】昭和41年4月2日以降
の人は、年金支給が、65歳からになるので、60歳台前半の仕組みは直接関係ありません。
計算方法の詳細は、厚労省が発行しているパンフレットをご覧ください。
在職老齢年金の行方
政府は公的年金制度の改正に向けての論点の一つとして、在職老齢年金の廃止について議論をしています。
年金を減額することは、シニア層の働く意欲を削ぐという批判があるためで、政府は、廃止の対象や時期など議論を本格化させていく予定です。
個人的には数年後に廃止になるのではと思っています。
廃止になると、家計にはどのような影響があるのでしょう。
社会保険料が上がる
厚労省の調査によると、高齢者の賃金水準を決めるに当たって、会社が特に考慮した点として、「在職老齢年金」が上位に挙げられています。
つまり、社員の年金が支給停止にならないように労働時間や給与を設定している会社が多いということです。
在職老齢年金の制度が廃止になれば、社員は労働時間を気にすることなく働けるようになりますので、労働時間が伸びていくのではないかと想定されます。
労働時間が伸び、給与が増えるので、それにあわせて社会保険料も上がります。
現在、社会保険の加入年齢は健康保険が、74歳まで対象で、厚生年金保険は、69歳までが対象です。
この年齢以降は保険料を支払う必要がありませんが、在職老齢年金の制度が廃止になれば、その財源を確保しなければならないので、この加入年齢を引き上げて、保険料を支払ってもらうケースが出てくるかもしれません。
他には、社会保険料率を引き上げていくことも考えられます。
現在、この在職老齢年金により、支給停止になっている金額は、1兆円にもなるそうです。
政府は、在職老齢年金を廃止にする代わりに、何かしらの財源確保策を打ってくると思います。
年金額が増える
年金を減らしたくないため労働時間を短くして、社会保険に加入していなかった人もいると思います。
その人たちは労働時間を伸ばすことによって健康保険や厚生年金保険に加入することになります。
社会保険料が、給与から天引きされることになりますが、厚生年金に加入していた期間の分だけ年金も増えることになります。
年金を増やすことができれば老後の資産形成にも有利になります。
最後に
現在の法律では65歳までは社員を雇用する義務があるため、多くの会社では定年を60歳にして、以降65歳までは契約社員で雇用しています。
この65歳という年齢を70歳まで引き上げることを政府は検討しています。
つまり、70歳までは働くことができるようになります 。
ですが会社としては、雇用期間が長くなるため、労務費が増えていくことになります。
能力の高くない人には、多くの給与を支払いたくないのが会社の本音です。
老後にゆとりのある生活をおくるためには、年金以外の勤労収入が必要不可欠です。
定年後も給与が下げられることのないようにするためには、これまでの仕事の延長線上にあるスキルだけではなく、新たなスキルを追加して、雇用されうる力(エンプロイアビリティ)を身につけていくことが求められるのではないでしょうか。
その雇用されうる力を身につけるため、定年前の現役時代から、ライフプラン、キャリアプランをつくり、それらをベースにして準備していきましょう。