こんにちは。
神戸のファイナンシャルプランナー 馬谷です。
皆さんは、会社へ入社したときに、社長さんや人事部などから、退職金の有無について、説明を受けましたでしょうか。
労働法では、会社が従業員に対して、退職金の有無を説明することになっています。
新卒で入社し、現在40代の方であれば、随分前の話なので、聞いたけど忘れてしまっているかもしれませんね。
20代のうちは、退職金のことを気にすることはないでしょうが、40代になってくると、定年が見えてくるので、
退職金があれば、どのくらいもらえるのか、退職金がなければ、老後資金をどうやって貯めようかと不安になってくるのではないでしょうか。
この退職金の、ある・なしは、老後の生活に大きな影響を及ぼします。
公的年金の支給開始年齢も、65歳からさらに引き上げられる可能性もありますから老後の準備は早ければ早いにこしたことはありません。
ここでは、退職金のない会社員の方を対象にしてこれからどのように資金を作っていけばいいのかをご紹介します。
目次
退職金のない会社の割合
厚労省の平成25年就労条件総合調査によると、退職金制度の有無は次のとおりです。
退職金制度のある会社・・・75.5%
退職金制度のない会社・・・24.5%
4社のうち、1社は退職金制度がありません。
この調査では、30名以上の会社を対象にしているので、30名未満の会社を含めると割合はもっと大きくなります。
私は、社会保険労務士として、中小企業さんの労務サポートもしていますが、社員数10名以下のところは、ほとんど退職金制度がありません。
退職金制度がある会社の平均支給額(大卒 勤続20年以上、定年退職者)で、約1900万円となっていますが、実感として、中小企業でこの金額が出る会社は、少ないと思います。
給与は上がっているか?
退職金がなくても、給与が上がっていれば、老後資金に充当することもできますが、厚労省の「毎月勤労統計調査」によると、上がるどころか、下がる傾向にあります。
下記の所定内給与とは、残業手当などを抜いた、毎月の基本給額だと思ってください。

退職金もなく、賃金も上がらない状態のなかで、老後資金を作っていくには、早めに効率よい対策を打っていく必要があります。
老後に資金はいくら必要なのか
ゆとりある生活に必要な金額
生命保険文化センターの資料によると、二人世帯で暮らす場合、最低限度の生活費として、約22万円が必要であり、旅行や趣味など、ゆとりある生活を送るには、約35万円が必要となっています。
仮に、寿命を85歳とすると、定年の60歳から25年あります。
最低限度の生活を送るためには、
25年×12か月×22万円=6,600万円 もの資金が必要になります。
生活費は、家庭ごとに違いますので、一概には言えませんが、参考にできると思います。
年金の支給額
厚労省の資料によると夫婦の年金見込み額は、22万円/月 です。
夫の平均収入が約43万円/月で、40年間就業した場合の額なので、中小企業ではもう少し低いかもしれません。
今の現役世代は、65歳から年金が支給されるので、85歳まで受給したとすると、20年あります。
20年×12か月×22万円=5,280万円 になります。
必要な貯蓄額
最低限の老後生活を送るのに必要な「6,600万円」から、年金「5,280万円」を差引くと、
1,320万円になります。
この 1,320万円が最低限貯蓄しなくてはならない金額です。
退職金があれば賄えますが、ない場合は、自力で準備しなくてはなりません。
老後資金を準備する方法
私の一番のおススメは、「確定拠出年金」です。
確定拠出年金とは、会社または個人が、掛金を拠出し、定期預金にしたり、投資信託を買ったりしながら、自己責任において運用し、老後に受け取る制度です。
会社が掛金を拠出する場合を「企業型」といい、個人が拠出する場合を「個人型」といいます。
企業型を導入している中小企業は少ないので、ここでは個人型についてご説明します。
個人型は、その名のとおり、個人が直接金融機関にお金を預けて、運用方法を指定し、運用益も含めて将来、一時金や年金として受け取ります。
投資信託などの用語が出てくると、これまで、金融商品を購入したことのない方にとっては、次のような不安が浮かんでくるのではないでしょうか。
・これまで株や投資信託などは一切やってこなかったからなんだか不安。
・自分で運用するというけれど、元本が割れたり、マイナスになったら嫌だ。
などでしょうか。
もちろん、そうしたリスクはあるのですが、投資信託での運用が怖ければ、定期預金で運用していく方法もあります。
会社員の方であれば、税金面でのメリットが大きいので、利用しない手はないと思います。
個人型確定拠出年金をおススメする理由
個人型確定拠出年金をおススメするには理由がありますので、ご説明します。
掛金が全額控除になる
メリット①として、掛金が全額所得控除になります。
仮に毎月の掛金が1万円の場合、その全額が所得控除になるので、所得税10%、住民税10%とすると、年間2万4千円の税金が減ります。
会社員であれば、会社が毎年、年末調整をしてくれますね。
例えば、生命保険に加入していれば、証明書を会社に出すことで、所得税を再計算してくれ、還付を受けられます。
この生命保険のパターンと同様に、確定拠出年金の掛金は、所得控除の対象になるので、税金が軽減されます。
運用益も非課税になり再投資できる
メリット②として、
通常、投資信託などの金融商品を運用すると、運用で発生した利益に課税されますが(源泉分離課税20.315%)、「確定拠出年金」なら非課税で再投資されます。
税金が取られずに、再投資されるので、利益が上積みできます。
将来、受給するときに税金が優遇される
メリット③として、
確定拠出年金は、自分で運用したお金を将来受け取るときに、税金が優遇されます。
通常は、受け取る金額に対して税率をかけて税金を算出するのですが、
確定拠出年金の場合は、受け取る金額から一定額を控除(退職所得控除、公的年金等控除)したあとの金額に税率をかけるので、控除がある分、税金が減ります。
積立シミュレーションをしてみる
あくまでシミュレーションであり、概算金額を保証するものではありませんが、40歳から60歳まで、毎月20,000円を積み立てて、3%で運用していくと約650万円になります。

20年間、コツコツ運用していくことで、175万円もの運用益が生まれます。175万円って大きな金額ですよね。
今は、銀行に預けても、ほんのわずかな利子しかつきません。
例えば、預金100万円、利率0.01%なら、税引後の利子は、年間100円にもなりません。ATMの手数料1回分で、年間の利子が吹き飛んでしまいます。
他に、会社に制度があれば、給与天引きで財形貯蓄していく方法もありますね。
財形貯蓄には、一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3種類があります。
老後資金に適しているのは、財形年金貯蓄になります。
給与天引きなので、確実に貯蓄できますし、元本550万円までの利子は非課税になるメリットもあります。
ですが、確定拠出年金のような税金面での優遇措置はなく、利率(0.01%程度)も高くありません。
ちなみに、グーグルなどで、「確定拠出年金」と検索すると、たくさんの情報が出てきますが、個人型確定拠出年金(通称 イデコ)の公式サイトは以下になります。
税金のシミュレーションもできるようになっているので、一度目を通してみると良いかと思います。
老後資金準備のまとめ
個人型確定拠出年金では、毎月20,000円を拠出することで、650万円を用意することができました。
「3%で運用するなんて無理でしょう」という声が聞こえてきそうですが、
企業年金連合会の平成28年の調査によると現加入者の平均運用値は、2.9%になっているので、無理な数字ではありません。
銀行に預けているだけでは、ほとんど利子がつきませんので、税金の優遇措置がある確定拠出年金は、効率よく貯蓄するのに適した制度と言えます。
一方で、確定拠出年金には、デメリットもあります。
それは、60歳以降でしか受け取ることができない点です。一旦加入すれば、原則途中で解約することもできません。
でも、別の見方をすれば、
60歳まで受取ることができないので、途中で引き出して使ってしまうこともないですし、確実に老後資金として貯蓄していくことができます。
これだけ税金を優遇しているので、「ぜひ使ってください」という国からのメッセージだと私は思っています。
一方で、「公的年金はあまりあてにしないで、老後の資金は自分で用意してください。そのため、税金を優遇しますから」というメッセージとも受け取れます。
確定拠出年金の運用責任はすべて個人にあり、リスクがまったくないとは言いませんが、定期預金を利用したり、低額から始めるなどリスクを低減する方法もあります。
節税メリットが大きいのでぜひ利用を検討してみてください。
さて、この確定拠出年金で、予定貯蓄金額の半分は準備できそうですね。
残り準備する額は、
1,320万円 ― 650万円 = 670万円になります。
これは、家計の見直しの中から捻出していくことになります。
この金額は、あくまで最低限の生活を送るために必要な額です。
趣味や旅行など、余裕をもって暮らすのであれば、さらに用意が必要です。
そのためには、将来のライフプランを作って、
教育資金
住宅ローン
生命保険
毎月の固定費
などを定期的に見直しながら、進めていく必要があります。
ですが、自分の家計のどこを見直していけばいいのか見当がつかないと思います。
その見当をつけるのにライフプラン作成は有効です。
ぜひ、作成を検討してみてください。
ライフプランについては、別のページでご説明していきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。