パワハラ防止法が、2020年6月に施行(中小企業は2022年4月)されますが 、それに先駆けて2019年4月に「働き方改革法」が施行されています。
この働き方改革法の中に、「産業医の機能強化」が盛り込まれています。
具体的には、
会社に対して「産業医等が従業員からの健康相談に応じて、適切な対応をするために会社体制の整備や必要な措置」を行う努力義務が課せられました。
また、「健康管理等を実施するために必要な情報を従業員から収集する権限を付与すべきこと」と定められました。
つまり、「従業員らの健康に関する相談を産業医が受けやすくするための体制をつくること」を会社に求めているわけです。
そして産業医は、必要に応じて会社に対し労働者の健康管理などについて勧告することができるとされています。
パワハラを受けている労働者は産業医に相談することで、産業医から会社に対して「パワハラ解決に向けて動いてください」と伝えてもらうことができるということです。
これは、パワハラ解決への選択肢のひとつですね。
今回はこの産業医の活用方法についてお伝えしたいと思います。
産業医とは
労働安全衛生法では、「常時50人以上の労働者を使用する事業所」について、
産業医を選任することが義務付けられています。
産業医は、医師の中でも特別な認定を受けた人のことを言います。
産業医の仕事は、主に以下のような職務を行うこととされています。
健康診断・面接指導などの実施やその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置
健康教育・健康相談・その他労働者の健康の保持増進を図るための措置
労働衛生教育に関すること
労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること
簡単に言うと、従業員の健康相談を受けたり、会社に対して必要な改善を行うように指導したりするのが仕事です。
従業員数が、50人未満の事業場については産業医の選任義務はありません。
ですが、
50人未満の会社でも、従業員の健康管理を行うのに必要な医学に関する知識を持つ医師などに、従業員の健康管理などの全部または一部を行わせるように努めなければならないと法律が定めています。
産業医へのパワハラ相談の効果
パワハラを受けている人の約4割が誰にも相談せず、ひとりで悩みを抱えてるという厚労省のデータがあります。
それだけ相談先がなく困っている人が多いということです。
中には、 おおごとにはしたくないとか、社内の人には相談しづらいなどの理由があるのかもしれません。
そうであるならば、社外の人である産業医にパワハラの相談をしてみてはどうでしょうか。
産業医は、医師ですから医学的な観点からアドバイスをもらうことができますし、話をすることで気持ちが軽くなるかもしれません
社外の人ですから相談がしやすいと思います。
そして冒頭でもお伝えした通り、産業医は必要な場合、会社に対し従業員の健康管理などについて勧告することができるとされています。
つまりパワハラ被害者を守るために、会社に対して対策を取るように求めることができるということです。
産業医から具体的な対策を求められた場合、会社としては対応せざるを得なくなります。
ただし注意点もあります。
産業医は医者ではありますが、ハラスメントやメンタルヘルス対策に強い人もいればそうでない人もいるということです。
ハラスメントやメンタルヘルスのことをよくわかっている人であれば、必ず話を聞いてくれますし、対策の相談にのってくれるはずです。
まとめ
パワハラを受けている時に、どこに相談すればよいか悩むことがあると思います。
その相談先として「産業医」は選択肢のひとつになります。
産業医に相談する時は、直接連絡を取るのか、担当部署を通して依頼するのかは会社によって異なると思います。
労働安全衛生法では、
会社は「産業医の業務の具体的な内容や、産業医に対する健康相談の申出の方法及び産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法」を従業員に周知しなければならないと定めています。
50人以上いる事業所であれば、産業医を選任しているので、相談方法を確認してみてください。
あなたの力になってくれるかもしれません。