パワハラ上司が部下に対して、暴言を吐く、無視して孤立させる、認めない、責任を押し付けるなどの行為ができてしまうのは、なぜなのでしょうか?
こうした悪の行為ができてしまう、その根源は「地位と権力」にあると思います。
会社は、社長を頂点としたピラミッド型組織ですが、地位と権力が上がっていくにつれて、正しくない行動をするというニュースが毎日大量に流れてきます。
最近は、会社に限らず、消防、警察、役所など、あらゆる組織でパワハラ問題が報告されています。
その数だけつらい思いをしている被害者がいるということです。
権力や地位を人へのイジメに使うのではなく、成長や目標達成の後押しなどに使ってほしいと思うのですが、パワハラする人はそんな考えを持ち合わせていません。
今回は地位や権力を笠に着て、パワハラする人の特徴と対策をお伝えしていきます。
「地位・権力」は人の思考や行動を変える
組織内である程度の地位につき、権力を行使できる立場になると、他の従業員より給与が多くなり、周りからはお世辞を言われたりするようになりますね。
そうすると、自分には力があると勘違いする人が出てきます。
会社での地位はあくまで役割にすぎないのですが、力を手に入れ大きくなったような気持ちになってしまうのでしょう。
そして、自分の欲求を満たす手段として人を扱うようになり、部下を無視する、罵倒するなど、卑劣な振る舞いをしていることにさえ気づかなくなっていきます。
スタンフォード大学の心理学者 デボラ・グルーエンフェルド氏は、人は下の者に対して権力を行使できる地位につくと、どのような状態になるか長年にわたり研究されています。
ある実験で3人1組にした学生に社会問題について長時間にわたって議論させて、そのうちの1人に他の2人が出した意見を評価する権限を与えました。
30分後に実験者がクッキー5枚をお皿に乗せて持っていくと、権力のある学生が2枚目のクッキーに手を伸ばす確率が高かったそうです。
これは、あくまで実験の一つにしかすぎませんが、ほんの小さな権力を手にしただけでも人の思考や行動が変わっていくことがわかります。
地位や権力のある人は、こうした機会が何度となくあるわけです。
もちろん、思考や行動が変わらない人もいますが、パワハラする人はこうした反応が悪い方に出るのです。
権力を笠に着たパワハラ上司の特徴
それでは、権力を笠にきた人の特徴を2つお伝えします。
話を「一般化」する
地位や権力で部下を攻撃する人の特徴として、「自分は物事をよく知っている」「自分が正しい」という話し方をしてきます。
そして、話の内容を「一般化」する傾向が強いです。
一般化とは、一部の情報をすべてに当てはめることです。
一般化の言い方としては
「いつも」「普通」「絶対」「全部」「すべて」「みんな」などといった表現がよく使われます。
例えば
お前は【いつも】仕事が遅い
お前みたいなやり方を【普通】はしない
お前が言っていることは【全部】間違っている
など限定的な言い方をします。
会社組織の中で、ある程度の地位にある人がこのような言い方をしてくると、言われたほうは、その内容がすべて真実であるかのように錯覚してしまいます。
抽象的な話で自分を偉く見せる
もうひとつ特徴的なのは、難しい専門用語や抽象的な言葉を多く使って、自分を「偉く」見せようとすることです。
自分を過大評価しており「自分は特別で、会社に必要な人間だ」「他人から称賛されるべき人間だ」と本気で思っています。
でも、そもそもパワハラするような人は人格者ではないので、部下から信頼や尊敬されることはありません。
称賛されることも、会社に必要な人間だとも言われることはありません。
でも、だからこそ、「自分は偉い人間なんだ」「称賛されるべき人間なんだ」と、どこかで実感したいのです。
そのために地位や権力を使い、常に誰かをバカにしたり、傷つけたりすることで、「自分は他人よりも偉い人間なんだ」「会社に必要な人間なんだ」と感じようとするのです。
地位や権力は部下や周りの人を成長させることや、幸せにすることにも使えるのに、自分のためにしか使えないのです。
どれだけ業績を上げていても、周りから信頼も尊敬もされない人は、ある意味かわいそうで孤独な人とも言えます。
権力を笠に着るパワハラ上司への対処方法
さきほど特徴を2つあげましたが、このような人にはどのように対処していけばいいのかをお伝えします。
相手の話の内容を分解する
権力を笠に着る人の特徴として、話を「一般化」してくるとお伝えしました。
相手が話を一般化してきたときは、そのまま受け止めるのではなく、 話の内容を分解し検証するようにしてください。
例えば
お前は【いつも】仕事が【遅い】
と言われたとします。
この 【いつも】とは、本当に毎回でしょうか?
新入社員なら、はじめはそういうこともあるかもしれませんが、ある程度経験があればそんなことはないはずです。
相手は、たまたま遅いと感じた、あなたのある仕事だけに目をつけて【いつも】と言っているにすぎません。
そして【遅い】も同様です。
「遅い」って何に対して遅いのでしょうか?
「遅い」と言ってくる上司と比較するのであれば、あなたは遅くて当たり前です。
だって上司のほうが経験豊富なのですから早くできて当然です。
もし、もともと決めていた期限が守れなくて「遅い」と言われているのなら、その点は反省して、次回から気をつければいいだけです。
このように相手の話をそのまま受け止めるのではなく、分解して、相手の言っていることは本当に正しいのか検証するようにしてください。
自分を評価しない
「自分は他人よりも偉い人間なんだ」「重要な人間なんだ」と考えている人は態度にも出ます。
「自分が一番偉いんだ」という意識が常にあるので、部下に対しても横柄で見下すような態度を取ってきます。
「俺は能力が高く、お前たちとは違うんだ」と自分を偉く見せるためなら、汚い言葉も平気で吐きます。
こうした相手の言動は、絶対にそのまま受け止めず、自分を評価もしないことです。
地位や権力のある人から否定的なことを言われると、それが真実であるような感じるかもしれません。
もしかしたら、自分が悪いから、自分がもっと頑張ればと思うかもしれません。
でも、そんなふうに感じる必要は一切ありませんよ。
相手はただ、自分を偉く見せたいだけなのです。
こんなときは、自分で自分を評価せずに、周りの信頼できる同僚などに「こんなこと言われたけれど、どう思いますか?」と相談してみてください。
自分一人でパワハラ上司の発言を理解しようとするのはやめておきましょう。
そして、こうした相手にはなるべく近づかないようにすることです。
一緒に職場にいると難しい面もあるかと思いますが、意識的に近づくのはやめて、ココロも決して許さないようにしてください。
まとめ
今回は、権力を笠に着るパワハラ上司の対処方法についてお伝えしてきました。
会社などの組織には、権力を笠に着て、理不尽な振る舞いをする人間が一定数います。
一方で権力を笠に着ず、お互いを尊重しながら仕事を進めていくことのできる人もいます。
その違いは、「組織の中では役割が違うだけで、お互い1人の人間同士だ」ということがよく分かっているかどうかだと思います。
人は地位や権力を持ったとき、どのような振る舞いをするのか、その人の本性があらわれるのではないかと思います。
自分のことだけしか考えず、ただ権力を上から振りかざすような上司には誰もついていきません。
誰もついていかないということは、職場の生産性も上がらないし、会社へも貢献していません。
そんな人の居場所は近いうちになくなると思います。
パワハラ上司にあたってしまったときは、まず自分を守ることを第一に考えるようにしてください。