「仕事そのものは嫌いではないし、これからもこの会社で勤めていきたいと思っている。
でも、パワハラ上司が怖く会社に行くことが苦しくなり、いっそのこと会社を退職してしまおうか」

などと考えて、だんだん心が疲弊してしまう。

「なぜ毎日上司の顔色をうかがいながら仕事をしなくてはいけないのか」

そう思っても、会社に行けば常に上司のことを気にしてしまい、一日中緊張とストレスを抱えながら仕事をしなければならない。

パワハラ被害者の方たちが願うのは「もうこんな状況から脱して、こころ穏やかに仕事をしていきたい」ことだと思います。

今回は、上司への恐れを取り払い、顔色をうかがうことなく、図太く過ごす方法についてお伝えしていきます。

理不尽なパワハラ上司と向き合う「開き直り」のススメ

「感情的ですぐ怒る」「気に入らないことがあると無視する」など理不尽で、心底嫌いな上司なのにその人の顔色ばかりみながら仕事をしてしまう。

また、かげではその上司のことをボロクソ言うのに面と向かってはなにも言わず、なんとか機嫌をとっておこうとすることはないでしょうか。

本来は上司といえども、理不尽で間違ったことを言ってくるのであれば面と向かって反論する必要があります。

そうしなければその職場にとっても会社にとってもマイナスだからです。

でも、多くの人が反論できないのは、その上司に嫌われてしまうことを恐れるからです。

「嫌われたら今の部署で仕事をすることができない」

「どこか遠くの部署へ異動させられるかもしれない」

本当は反論したいけれど、そうした不安や心配が頭の中でいっぱいになって、最終的には上司に合わせてしまうことになります。

それに上司に従ってしまうのは、上司が理不尽なことを言ってきたとしても、その指示に従ってさえいれば、仕事上で何かトラブルが起きたときも、上司の責任にすることができると思う面もあるのではないでしょうか。

こうして問題解決への一歩を踏み出すことができずに時間だけが過ぎ去ってしまいます。

こんなとき、もっと「図太く」なれる方法があれば上司への恐れを減らし、前に進むことができると思いませんか。

失敗への恐れなくす秘訣は「開き直り」にある

社内窓口に相談するにしても、上司に対して面と向かって「パワハラをやめろ」と言い返すにしても、何か行動を起こすとき頭によぎるのはどんなイメージでしょうか?

もちろん成功したイメージもあると思うのですが、「逆に失敗したらどうしよう」というイメージのほうが大きいのではないかと思うのです。

わたしがこれまで相談を受けてきた経験では、真面目な人、誠実な人などその傾向が強いように感じます。

ではどうしたら、図太くなり、恐れを減らすことができるのでしょうか?

それは「禅」がヒントを与えてくれています。

「禅」」とは仏教の一派のことを言いますが、曹洞宗徳雄山建功寺の禅僧である枡野俊明氏(平成18年 ニューズウィーク日本版『世界が尊敬する日本人 100人』に選出)は、

「誤解を恐れずに言えば、実は禅僧はみな図太い」と言っています。

一体どういうことなのか。

枡野氏の著書である「傷つきやすい人のための図太くなれる禅思考」には、「生きていくうえで、心を強く持っていられる源流になっているのは真の図太さである」とし、その内容を説明されています。

枡野氏が禅僧になるため修行に入った当初は、右も左もわからない状態で何をしても失敗の連続だったそうです。

挨拶から箸の上げ下ろし、立ち方、歩き方などふるまいの全てにダメ出しをされます。

当時は鉄拳による教えが当たり前であり、とにかく叱られてばかりだったそうですが、そんな修行を続けていくと気づくことがあったそうです。

それは「失敗するのは当たり前」という気づきです。

「できない自分を認めてそのまま受け入れようという気持ちになったとき、そこに気づくことができた」

今振り返ってみると、気づきの中身は「開き直ることだった、開き直ることで失敗への恐れが薄れ、目の前のことに打ち込むことができた」と語っています。

開き直ることができれば「失敗したっていい、とにかくやるしかない」と思えてくるのです。

開き直りの効果

「開き直る」という言葉は、一般的にはあまり良いイメージでは使われないかもしれませんが、 開き直ることで失敗を恐れずに行動できるようになっていくのです。

私自身も会社を辞めて独立するとき、営業経験がゼロだったのでアポ取りから営業プレゼンなど行動ひとつひとつに恐れと不安があり、上手くいかないことが多々ありました。

でも、開き直って「ダメならダメでいい、また方法を考えればいい。とりあえずやってみよう」と決めてしまうと結果が良かったのです。

この「開き直り」をパワハラ問題解決に当てはめてみるとどうでしょうか。

私や枡野氏の体験談と一緒に語ることはできないかもしれませんが、解決するにあたってなにか行動しようとするとき、恐れがたくさん出てくるかもしれません。

でも、開き直ることでポジティブな方向に意識が転じていくようになるのではないでしょうか。

先日、ある相談者さんはこのような話をされました。

「自分がいつまでもグダグダしているのは家族や同僚に迷惑をかけます。
 自分も嫌になります。だからある意味開き直って行動します」

この相談者さんは、もう何年も上司からパワハラ被害を受けていたのですが、報復が怖くて社内窓口に相談できなかったそうです。

でも、開き直って「失敗したっていいや、なんとかなる」と思えたから行動に移せたそうです。

社内窓口に相談したから、それですべて解決とはいかないかもしれません。
でも行動を起こさなければ決して解決には向かいません。

「でも・・・・」はもうやめましょう

それでも、行動した結果、

「さらにパワハラがひどくなるのではないか」

「自分だけが異動させられるのではないか」

「さらにきつい仕事を割り当てられるのではないか」

など、先のことを予想した悩みが次々出てくるかもしれません。

でも、いくら悩んでも結局のところ解決策にたどり着くことはできないのです。

それどころか悩みが悩みをよんで、もう身動きがとれなくなります。

しかし、現実的に起きているのは、上司との人間関係が良くないということです。

それは自分が感じていることであり、上司が実際にどんな思いを持っているかは分かりません。

だから、自分ができることとすれば、仲のいい同僚や他部署の話しやすい先輩などに相談してみることもひとつの方法でしょう。

第三者からみて、そのパワハラ上司と自分の関係がどのように映っているのか、どのような問題があると思っているのかなどを聞いてみると、そこに解決へのヒントがあるかもしれません。

パワハラ被害を受けていると、どうしても自分と上司との関係性しか見えなくなってしまうので、第三者の客観的な意見を聞くことは重要です。

動くには勇気が必要ですが、一人で動けないのであれば信頼できる同僚や友人、家族もしくは外部の専門家に相談してみてください。

きっと力になってくれる人がいるはずです。

まとめ

今回はパワハラ上司に立ち向かうために「図太く過ごす方法」についてお伝えしました。

「失敗したっていい、開き直ってとにかくやるしかない」という言葉は、もしかしたら、いい加減で、なげやりな印象を与えるかもしれません。

でも、動かなければなにも変わらないのです。

動けばその結果が必ず現れますし、その結果に対する対策も必ずあります。

枡野氏は、こんなことも言っています。

「やってみなければ失敗するかどうかは分からないのです。分からないことは放っておく。失敗に縛られない。それが禅の根本的な考え方です。」

パワハラ上司との人間関係を改善していくために、その上司がどんな性格で、どんな行動を望むのかなどを観察した上で対策をとることは有効ですが 、その人の本心を理解することはできません。

だから自分で対策できる以外のことは悩んでも仕方ありません。
いくら考えても分からないものは考えることをやめてしまいましょう。

今、悩み苦しんでいるパワハラ問題の解決に向けて一歩が踏み出せないときは、この「開き直る」という禅の教えを取り入れてみませんか?