パワハラ被害を受けていると、相手に対していつか仕返しをしてやりたいとか、不幸になればいいとか思うのは当たり前の感情だと思います。

仕返しの最終的な手段は、裁判を起こして上司や会社を訴えることになりますが、もし争った場合どのくらいの慰謝料になるのでしょうか。

これまでの判例をみてみると、金額は10万円程度から2,000万円以上認定するものまであり、その認定額には大きな幅があります。

ですが、一般的にはそれほど高い金額にはなりません。

慰謝料の金額を認定する際に考慮していると思われるものは

行為の悪質性

行為の継続性

結果の重大性

被害者側の対応

などがあげられますので、それぞれの判例をお伝えしたいと思います。

パワハラ行為の悪質性

パワハラとされる行為が、どの程度悪質かという点は慰謝料を認定する上で重要な要素となります。

上司の侮辱的な指導や叱責にパワハラの意図がなかったとして、5万円の慰謝料を認めた裁判(東京高判平成17年4月20日)や

「いい加減にせえよ、アホちゃうか」などの暴言や、胸ぐらをつかんで揺さぶった暴行について、5万円の慰謝料を認めた裁判(大阪地判平成24年5月25日)などがあります。

さらに悪質性が高いと考えられるものとして

「お前みたいなものが入ってくるから〇〇部長がリストラになるんだ」

「こんなこともわからないのか」

と発言したり

・ガムを吐いてズボンにつけて笑う

・机を蹴飛ばす

など種々の嫌がらせをしたことについて、150万円の慰謝料を認めた裁判(津地判平成21年2月19日)などがあります。

パワハラ行為の継続性

パワハラの行為が一回限りのものであったのか、継続的にされていたものなのか、継続的だったとしてもどのくらいの期間継続されてきたのかは、慰謝料を認定する上で重要な要素になってきます。

ワンマンの社長から社員に対して、6年半にわたり、

「お前はクビ、バカかお前は」

などと再三罵倒され長時間の叱責を受け

「代わりはいくらでもいる」

などと退職勧奨をされるなどしたとして、100万円の慰謝料を認めた裁判(東京地判平成28年2月3日)などがあります。

一つ一つの行為は悪質性が高くなくても、長期間継続することで高額な慰謝料が認定される傾向があるようです。

 結果の重大性

パワハラ行為が引き起こした結果が重大である場合は、慰謝料を認定するにあたって極めて重要なものとなります。

上司から部下に対して

「新入社員以下だ、もう任せられない」
「なんでわからない、お前はバカ」

などど、これらに類する発言を繰り返し

さらに、うつ病の罹患したとして休職を申し出てきた時に、有給休暇を消化するようにしてほしいなどと述べて、休職の自由を阻害する行為を行ったとして慰謝料450万円を認めた裁判(東京地判平成26年7月31日)などがあります。

その他の判例を見ても

うつ病に罹患した場合は、少なくとも100万円以上の慰謝料が認定されていて、重症度に応じて増額されていると考えられます。

そしてパワハラ行為が自殺につながった場合は、金額が高額になります。

上司から新入社員に対して

「いつまで新人気分か」
「会社を辞めたほうがみんなのためになる」
「死んでしまえばいい」
「この世から消えてほしい」

などの言葉を何度も投げかけて自殺に追い込んだとして、慰謝料2,300万円を認めた裁判(福井地裁平成26年11月28日 )などがあります。

その他にも、パワハラの結果として被害者が自殺した場合においては、2,000万円前後の慰謝料が認定されています。

裁判ですから金額をつけることになるのですが、亡くなってしまった人はもう戻ってこないことを考えるとやりきれない気持ちになります。

被害者側の対応

これまでの判例では、被害者側に落ち度が認められる場合は、慰謝料が減額されることもあります。

例えば、

被害者が不遜な態度を取り続けていたり

被害者側に仕事を与えることを躊躇させる言動があったり

パワハラ行為とされた上司の言動が、被害者が態度を改めないことに起因していたケースなどです。

まとめ

パワハラ行為を受けている時は相手に対して裁判を起こしてでも、痛めつけてやりたい、仕返ししてやりたいと思うのが普通の感覚だと思います。

ですが、その裁判の見返りとして受け取る慰謝料の金額は大きくありません。

裁判を行うには労力やお金、強い精神力が必要となりますし、思い通りの判決結果が出るとも限りません。

受け取るのが少額の慰謝料であれば、経費や弁護士費用を差し引くとマイナスになることもあります。

裁判を起こすことが相手に仕返しすることにつながるのかもしれませんが、裁判の結果、被害者自身や家族が得られるものとそうでないものを整理し、十分に考慮した上で判断することが大切です。

裁判は最後の手段ですから、その前になんとか解決できる方法を模索してみてください。

自分一人で考えていると視野が狭くなり、解決方法も限られてしまうので、まずは周りへの相談することをおすすめします。