厚生労働省の調査によると、労働者のうち、職業生活でストレスを感じている人は、約6割にものぼり、ストレス等の原因1位は、「職場の人間関係の問題」との結果が出ています。
その中でも、パワハラを受けてる人は、特に大きなストレスを抱えていると思います。
パワハラ上司の前では、言いたいことが言えずに我慢してしまい、言えないことがさらにストレスを生むという経験をしていないでしょうか?
今回は我慢せずに、言いたいことを言う方法のひとつとして、アサーションについてお伝えしていきたいと思います。
アサーションとは
コミュニケーション方法の一つに「アサーション」と呼ばれるものがあります。
「アサーション」とは、自分も相手も大切にしながら、上手に自分の気持ちや意見を伝える方法です。
馴染みのない言葉かもしれませんが、アサーションは1950年代半ばに北米で生まれたものです。
人間関係が苦手な人、引っ込み思案でコミュニケーションが苦手な人を対象としたカウンセリングの一つの方法として開発されました。
この方法を使うと、自分の正直な気持ちや意見を相手に伝えることや、相手の意見にも耳を傾けることができるようになるので、あつれきを生みにくく、不用意に人間関係をこじらせることが少なくなります。
何か難しそうに感じますが、自然に身に付けている人も少なくない方法です。
近年では、学校の教育現場で利用されることもあるようです。
コミュニケーションのタイプ
人のコミュニケーションには3つのタイプがあると言われています。
下記③のタイプをアサーションと考えます。
①ノン・アサーティブ (非主張型) |
自分の意見や考えを言わない非主張的な自己表現。 本心を抑えているためストレスが溜まりやすく、何かのきっかけで爆発することもある。 |
②アグレッシブ (攻撃型) |
自分の思いを一方的に伝える攻撃的な自己表現。 しばしば声を荒げることもあるが、後から自分の強引さに嫌気がさしたりするなど、ストレスを抱えやすい。 |
③アサーティブ (さわやか型) |
自分も相手も大切にしながら、自分の思いを素直に伝える。 あつれきを生みにくく、うまく運べば信頼関係もアップする。 |
パワハラ被害者の人は、ノン・アサーティブ型が多いと思います。
ノンアサーティブの人は、相手に自分の意見や考えを言っても理解してもらえないだろうと最初から諦めていませんか。
だから言わない方がいいと思っていませんか?
我慢に我慢を重ねると、どんどん苦しくなっていきますよね。
私自身が元々ノンアサーティブ型のタイプなのでその気持ちがよくわかります。
でも私は、人は誰でも自分の気持ちや考えを表現して良いと思います。
上司部下の関係だから上司にものを言えないという関係性はコミュニケーションが成り立っていない証拠でしょう。
これからは、表現しても良いという権利に基づいたアサーションを行っていくことで自分の思いを素直に伝えていきましょう。
その方法として DESC法があります。
DESC法とは
これは、問題解決のためのアサーションです。
パワハラ上司の前に立ち、自分の気持ちや考えを明確にしてから話すときに役立ちます。
そのステップを見ていきましょう。
DESC法は次のステップで考えていきます。
項目 | 説明 |
D=Describe (描写する) |
自分が対応しようとする状況や相手の行動を客観的に述べる。 |
E=Express (表現する) |
状況や相手の言動に対する自分の気持ちを表現したり説明したりする。 |
S=Specify (提案する) |
相手の望む行動、妥協案、解決策などの提案をする。 |
C=Consequences (結果を伝える) |
提案したことの同意が取れた場合、同意が取れない場合を想像し、それぞれに選択肢を示す。 |
この4つのステップの頭文字を取ってDESC法と呼ばれています。
例えば些細なミスをみんなの前で大声で叱責された時のセリフについて考えてみましょう。
D | 私のミスを指摘してもらい助かりました。同じミスをしないように気を付けます。 |
E | 私がミスをしたのは申し訳なかったですが、今のように大きな声で叱責されると怖いと感じます。 |
S | これからは大きな声で話をされるのはやめていただけないでしょうか。 |
C |
返事が YES の場合: |
これは一つの例ですが、パワハラを受けているときは気が動転していて、うまく話をすることができませんから、あらかじめ準備しておけば、自分の気持を言えるのではないでしょうか。
もしあなたの感情が爆発して、相手に対して攻撃的な言い方をしたりすると相手も反発してきます。
そのためこのようなステップを踏んで自己主張していけば、円滑に自分の意見を伝えられるようになりますし問題も大きくならずにすみます。
それでも相手が止めない場合は、第三者に入ってもらって解決していくべきです。
怖いと感じている言葉を発すれば周りの社員は、必ずそれを聞いています。
それもパワハラで訴える時の証拠の一つになります。
あなたの周りに協力者がいるのであれば、会話のやり取りをメモしてもらうようにしましょう。
自分だけのメモではなく他人が客観的にとってくれたメモも大きな証拠になります。
まとめ
今回は、パワハラ上司に対応するためのアサーションスキルについてお伝えしました。
本当に効果があるのだろうかと疑問をお持ちの人もいるかもしれませんが、なにか行動を起こしていかなければ、今の環境は変わっていきません。
パワハラ上司に向かって自分の感情を伝えるのは勇気がいりますし、怖いと思いますが、ご自身の気持ちを大事にして一言を発してみてください。
それで被害が抑えられるケースもあります。
「怖い」と発言している人に対して、同じ行為をしてくるパワハラ上司は、どうしようもない人間です。
そんな人に関わるのは止めましょう。
そんなときは、経営層に直接訴えるなどして、もし改善しないのであれば、次の職場を考えましょう。
アサーションは、コミュニケーションスキルのひとつとして身につけておくと、人間関係の構築を手助けしてくれるので、参考にしてみてください。