あの上司を懲戒処分にしてやりたい!!

パワハラを受けているとき「パワハラ上司を懲戒処分してやりたい」という気持ちが出来てくるのは当然なことだと思います。

しかし、こうした思いを持ちながらも行動は起こさずにグッと耐えている人が多く、役所へのパワハラ相談は年々増加し年間8万件を超えることになり、もはや社会問題になっています。

こうした状況もあって、令和元年にパワハラ防止法が成立し、令和2年6月1日(中小企業は令和4年4月1日)に施行されました。

ただ、残念ながらこの法律は、あくまでパワハラを防止するための措置を会社に求めるものであってパワハラ加害者に対する処分を定めたものではありません。

パワハラの被害を受けた場合、法律によって懲戒処分を求めることができればよいのですが、そこまではできないのです。

では、この法律に頼らずに相手を「懲戒処分」するにはどうすればいいのか、今回はその要件についてお伝えしていきます。

懲戒処分が有効となる要件

懲戒処分は、次の3つの要件がすべてそろっている必要があります。

①懲戒処分を定めた「就業規則」が存在すること

懲戒処分は会社が懲戒の権限を行使するため

・「就業規則」において懲戒の種類や事由を明記すること

・「就業規則」を労働者に周知しておくこと

が必要となっています。

そのためまずは、会社の就業規則の懲戒条文箇所を確認してみてください。

社内でパワハラ行為をした場合、懲戒処分の内容として

・けん責(注意・警告を行い、始末書を提出させて戒める処分)
・減給
・出勤停止
・降格
・諭旨解雇(会社の酌量で懲戒解雇より処分を若干軽減した解雇)
・懲戒解雇

などが定められている場合があります。

このように定められていれば、パワハラ加害者に対して懲戒処分を会社に求めることができます。

また、就業規則に懲戒事由として「パワハラをしたこと」と明記されていなくても、セクハラに関する規定があったり、パワハラが懲戒処分になることを従業員に周知していたことから、就業規則にパワハラの文言がなくても懲戒処分の対象とすることができると判断した裁判例もあります。

厚生労働省が出しているモデル就業規則にも、パワハラ行為の禁止や違反した場合は、状況に応じて「けん責、減給又は出勤停止とする」というような処分内容も記載されています。

今後、パワハラを直接の懲戒処分の対象とする会社は増加していくと思いますから、会社の就業規則は注視してください。

②懲戒事由に該当していること

懲戒処分が有効とされるには、

・パワハラ加害者の行為が就業規則上で懲戒事由に該当する

・懲戒処分とすることに「客観的かつ合理的な理由」がある

この2点が必要とされています。

具体的にはパワハラの定義として規定されている次の3点を検討して、総合的に判断することになります。

・職場内の優位性を背景とした行為であるか

・言動が業務の適正な範囲を超えているか

・被害者に精神的・身体的苦痛などのダメージを与えたか

③社会一般的に見て相当であること

会社がパワハラ加害者に懲戒処分を行なった場合、加害者から「処分が重すぎる。処分を撤回しろ」と裁判で訴えられるケースもあります。

実際、重すぎる処分を行ったとして、懲戒処分が無効と判断された裁判例も出ています。

実際のところ、加害者に対して厳重注意や他の軽い懲戒処分によっても改善されず、行為が悪質である時でなければ「懲戒解雇」は難しいです。

解雇は加害者にとって仕事がなくなり収入も途絶えることになるので、裁判でも考慮しているようです。

裁判のパワハラ内容を見て、私個人としては「これは懲戒解雇だろう」と思う事例でも、減給や降級処分になっている例が少なくありません。

それでも、けん責、減給などの処分がされれば、加害者はハラスメント行為をやめると思いますので、就業規則をもとに懲戒処分を会社に求めることは効果があります。

また、この加害者が、もし転職することになった場合、採用面接などで前職を退職した理由を聞かれた際「パワハラ行為をしたから」とは言えないでしょう。

そうすると、面接で嘘をついたことになり、今度は内定取り消しや解雇になる場合もあり得ます。

加害者にとっては、将来を通じてつきまとってくる大きなデメリットなのですが、これを理解していないパワハラ加害者は多いです。

就業規則はパワハラに対する大きな盾になるので、利用することでパワハラ被害を最小限に食い止めましょう。

もし就業規則にパワハラについての記載がなければ、総務担当者などに就業規則改定を働きかけていくのも一つの手だと思います。

まとめ

セクハラの場合は、個人の受け取り方でハラスメントに該当するかどうかが決まりますが、パワハラの場合は、平均的な労働者の感じ方を基準として判断されます。

そのため一定の客観性が必要とされており、本人の意に沿わないことがパワハラにあたるわけではありません。

そのためパワハラ行為を受けた場合は、5 W1 H で「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように行ったのか」ということを常に客観的にメモを取るようにしてください。

そして、その内容が就業規則の懲戒事由に該当するかどうかも確認しておくようにしましょう。

普段仕事をしていると就業規則を見る機会はほとんどないかもしれません。

でも、パワハラ加害者から自分を守るには就業規則の効力は大きいですから、就業規則の内容を日頃からチェックしておくようにしましょう。