「ゲートキーパー」という言葉を聴いたことがありますか?
ゲートキーパーとは直訳すれば「門番」のことですが、自殺予防の専門職を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。
厚生労働省によると、ゲートキーパーとは「自殺の危険を示すサインに気づき適切な対応を図ることができる人」のことを言い、自殺を防ぐための命の門番と位置づけています。
このゲートキーパー活動に関与しているあるカウンセラーの方が言うには「自分のカウンセラーとしての仕事のひとつは「あなたはひとりではない、仲間がいる」ことを伝えることだそうです。
そして、アドバイスとして
「つらく苦しい経験や出来事でも考え方を変えることで、不安や苦しみはやわらぐことができる。その考え方を変えるための3ステップがある」と言っています。
そのアドバイスをパワハラからの脱出にアレンジしてご紹介したいと思います。
ステップ1 観察すること
同じ職場の同僚たちを観察してみて、パワハラしてくる上司が自分だけを攻撃しているわけではないと分かったときは考え方を変える機会です。
上司から嫌がらせを受け、つらく当たられると「自分がなにか悪いことをしただろうか」と自分を責めてしまいがちです。
このとき自分と上司との関係性にのみ注目してしまいがちなのですが
もし、その上司が自分だけでなく他の人にも同じように嫌がらせしているひどい人間であればどうでしょうか?
誰に対しても行っているのであれば「嫌がらせを受けるのは自分が悪いからではない、上司がもともとひどい人間だからだ」と判断できます。
そして、「つらく苦しいのは自分ひとりだけではない、同じように苦しんでいる仲間がいる」という視点で考えることができ、自分を責めなくてすむようになります。
ステップ2 物事の考え方を変える
パワハラ上司は相手に対して「お前が悪い、お前の能力がないからだ」と責め立ててきますが、
上司が誰に対してもそうした態度を取るひどい人間だとわかったのであれば
「どうしようもないバカな上司が自分勝手な行為をしているだけであり、自分にはまったく非のないことである。だから、自分がストレスや不安を感じる必要はまったくない」
と考えるようにしていきます。
実際「自分に非がない」と理解できるとあまり苦しまずにすむことはある実験でもわかっています。
スタンフォード大学の研究で
学生たちに「怒っている人の写真」を見せてその反応を調べた実験があります。
片方のグループには最初に写真を見せたあとに
「この人はあなたに腹を立てているのではなくて嫌なことがあった、あるいは上司と喧嘩しただけ」と想像してもらい
もう片方のグループには特に何もしませんでした。
そして二つのグループに怒った顔の写真を見せると
前者は最初に比べて動揺しなくなり
後者は二度目もやはり同じように動揺したそうです。
この結果から
パワハラ上司が怒鳴ったとしても「上司の怒りは自分とは無関係なものだ」と考えるようになれば感情的に影響を受けなくなり、つらい気持ちになることを防ぐことができると言えます。
このように物事の考え方を変えることは、ネガティブになりがちな感情を抑える効果があります。
ステップ3 相手と心理的距離を置く
どうしようもないパワハラ上司に巻き込まれ傷つけられないようにするためには、距離を置くことが最善策です。
距離を置くと言っても、パワハラ上司が同じ職場にいると物理的に距離を置くのは難しいと思います。
そこで今回は心理的に距離を置く方法を2つご紹介します。
仕事とプライベートを区分けする
1つ目は「仕事とプライベートをしっかり区分けする」ことです。
職場でつらい思いをしても自宅では違うことに目を向けて心身を回復させ、自分の生活を楽しむようにします。
でも、家にいても仕事や上司のことを思い出してしまい、なかなか頭が切り替えられないという人もいるのではないでしょうか。
そんなときは、自分でちょっとした決めごとをしておくと切り替えやすくなります。
例えば
・退社時に乗るエレベーターの扉が開いた瞬間からはプライベート時間と決める。
・仕事で履く靴と、プライベートで履く靴を用意しておき、帰りに履き替える
・帰りにお気に入りのカフェでコーヒーを飲む。
など、〇〇したらそこからはプライベート時間だと決めておき、ルーチン化しておくことをオススメします。
あとは、プライベートの時間になったら、会社のスマホや携帯電話を見ないようにするのも効果的です。
スマホは便利な機器ですが仕事に直結していますから、自分から遠ざけておくほうがよいです。
でも、どうしても気になってしまうことがあると思います。
その場合は、「◯時に1回だけ確認する」というように自分のルールを決めておくことも仕事とプライベートを区分けする一つの手です。
うわべだけの返事を繰り返す
2つ目は、パワハラ上司と関わるとき、できるだけ自分の感情を出さずに相手の言うことを適当に受け流すことです。
相手が暴言を吐き、怒りで攻撃してきても「またバカな上司がなにか言い出した」くらいに考えて、できるだけあいまいで当たりさわりのない返事をします。
相手の怒りの感情に反発すると巻き込まれてしまうので、怒ったり悲しんだりなどの感情を出さずうわべだけの返事を繰り返します。
例えば
「貴重な意見をありがとうございます。とても参考になりました」
「なるほど〇〇といった視点が抜けていました。勉強になりました」
などできるだけありきたりな返事に終始します。
そうすると相手に攻撃材料を与えずにすむので、相手は新たな攻撃ができず徐々に話すことをやめていきます。
まとめ
誰かが嫌なことを言ってくるときや嫌がらせをしてきたとき、すぐに「自分が悪い」と思ってしまう人は
一度立ち止まって「違う、違う、自分が悪いのではない」と自分に言い聞かせるようにしてください。
相手が嫌なことを言ってくるにはなにかしら理由があるはずですが、その理由はあなたにはなく自分勝手な理由ですから気にする必要はありません。
パワハラ上司から逃れるために部署異動や転勤などの方法で物理的に距離を取ることができればいいのですが、それが難しければ今回ご紹介した心理的に離れる方法を積極的に取り入れてください。
相手が攻撃してきても、同じ土俵に立ってはダメです。
まともに相手にしようと思っても相手は耳を傾けませんし、パワハラを受けている人の気持がまったくわかりませんから。
まずは、今回ご紹介した方法を含めて「心理的に相手との距離を取る」ことを意識して行動していきましょう。
あなたはひとりではなく、周りには気心の知れた同僚や家族、友人が必ずいるはずです。
つらく苦しいときは躊躇せず相談しましょう。
必ず助けになってくれるはずです。